Rokkys diary

日常をエッセイに

フリーマーケットの男1

    季節は春。桜の花びらも散った近所の公園。午前9時ごろ、私はフラフラと公園を散歩していた🚶‍♂️。今日は日曜日である。平日、夜遅くまで働いて寝て、朝早く起きて会社に向かう。このルーティンを20年近くしている。これを言うと歳がバレてしまうが。

    私の日曜の日課として、朝起きて天気が良ければ近所の公園に行く。広い草原が広がっていて、日光をたくさん浴びることができる。私は本を一冊家から持ってきてベンチに腰掛けた。今日は少し時間が早いからか、人はまばらである。私はしおりの挟んでいたページを開き小説を読んだ。

 


   10分ぐらい経った頃だろうか_。1人の若い男が大きな荷台を引きずってやってきた。最初、食べ物の屋台かと思ったがどうやら違うらしい。目的の場所に着くと、木目調のデザインがあしらわれた敷物を地面に敷き始めた。どうやらこの公園でフリーマーケットをやるらしい。男は敷物にせっせと品物を置いていき、綺麗に整列させていった。これで準備オッケーと手をぱっぱとはらうと、用意しておいた小さいキャンプ用の椅子に腰掛け、客を待っていた。

   今時珍しいなと思った。昔は上野公園や代々木公園の方でよく見かけたが最近あまり見なくなった。今となってはメ○○○などインターネットオンラインで物々交換できる時代である。それをなぜアナログな方法で?私は気になって仕方なくなってしまい、読んでいたページにしおりを挟んで、男の元へ向かった。


    男の方に近づくと男の顔がはっきりと見えてきた。歳は30歳手前であろうか。少し髭を生やしているがきちんと整えられている。アウトドアな服を身に纏っていた。私は置いてあるものを見て驚いた。左から見て本がズラリと並び中央にCDやレコード(デビッド・ボウイから最新ukロックまで)があった。左側にはきちんと畳まれた古着が並べられていた。割と洋風の物が多く、発電機の電源に繋がれたレコードプレーヤーからジャズが聞こえてくる。順番に見ているとお手頃な値段で一般市民でも買えるくらい、というよりかなりお得に手に入れられることが分かった。(ついこないだ買った本が半額の値段で売ってあり少しショックを受けた)

    私が品定めしているうちに人が次々と集まってきて、ちょっとした人だかりができた。当然であろう。カラフルな本の表紙や服、CDやレコードのジャケットは遠くからでも異彩を放つ。それに、この公園でフリーマーケットを開かれることなど滅多にないため、珍しかったのもあるだろう。物は飛ぶように売れ、あっという間に敷物の上は空っぽになった。私は昔から欲しいものを選ぶときには吟味するタイプなので、売れていく様子を目で追うことしか出来なかった。

    若い男は腰を上げ、椅子を畳むとせっせと敷物を片付け、さっきよりも軽くなった荷台を押しながら帰っていった。帰り際、私を見るとニコッと笑顔を見せ、会釈して公園から消えていった。

    あの男は何者か?私は気になって仕方がなかったのと、物をすぐ選べない優柔不断な性格の自分に嫌気が差した。これから本を読み直す気にもなれなかったので、私は溜息をつきながら家に帰った。