Rokkys diary

日常をエッセイに

フリーマーケットの男4

(フリーマーケットの男3話みてない人http://rokky5.hatenablog.com/entry/2019/01/06/061628を読んでみてください)

 

 

(時刻は7時57分!天気予報の時間です。さぁ、お天気キャスターの〇〇さんを呼んでみましょう!〇〇さーん。)

(はーい🙋‍♀️!こちらお台場からお伝えしておりまーす!今日は北海道から九州まで高気圧に覆われていて、日差しの良い、洗濯日和となるでしょう!沖縄は、南から湿った空気の影響で所により雨が降る模様です。以上お台場からでした!)

   

 


    今日はどうやら、東京は晴れのようである。私は軽く朝食をとった後、テレビの電源を消し、いつもの公園へ向かった。空の多くは青色で覆われていて、所々に白い雲がゆっくりと西の方へ流れていく。街路樹からスズメの鳴き声が聞こえる。今日はいい1日になりそうである。

 


「大金を手に入れたら、どうしますか_。」

 


   先週からこの言葉について時間がある時考えてしまう。お金はあった方が良い。

単純に考えて、お金があれば、色々と自由度が広がる。好きなものを物を買うことができるし、家も立てることができる。海外にも行けるし、借金の返済に追われなく済む。

     しかし、お金はありすぎてもどう使っていいか分からず、途方にくれてしまうのではなかろうか?税金や遺産相続問題、ある日突然誰かに襲われて金を要求されるかもしれない_。毎日びくびくと怯える生活を送るのだろうか。

      私はブータン🇧🇹の王子が日本に来た時を思い出した。国民の幸福度でいうと、ブータンの方が日本よりも高いらしい。つまり、国民一人当たりの所得は日本の方がいいのにもかかわらず、ブータンの方が幸せだと感じている人が割合的に多いということだ。お金があるから幸せになれるわけではない_。しかし、お金はあった方が良い_。んー。私は考えてしまった。

    気がつくといつもの公園に来ていた。今日はまだあの男は来ていない。私はいつも定位置(木で作られたベンチ)に誰かが座っているので、仕方なく別のベンチを探した。しかし、他のベンチも無さそうである。私は公園にある一番大きな木の下の木陰に入り、草原の上に座った。ポケットから本を出そうとすると、何も入ってないことに気づいた。しまった。今朝から考え事をしてたせいで本を持ってくるのを忘れてしまった。私はゴロンと仰向けになり、釣り糸のような形をしたすじ雲を見た。

     そういえば、今でこそ安定してお金を稼ぐことができるが、若い頃は生きるのに必死だった。1990年代初頭にバブル経済が破綻し、景気が一気に減速した。いわゆる「バブル崩壊」だ。大学では、学年が数個上の先輩がゴールドカードを当たり前のように所持し、また若い女性は高級レストランで男性に奢ってもらっていた。それが、一転して日本の長い不景気の時代に入る。就活していた当時、就職氷河期だけあって大学生の就職率は60%を切っていた。想像を絶するしんどさであった。どこも雇用が厳しいため、本当に優秀な人しか就職できない_。正社員なんてなれない、契約社員として働くしかない。企業も収益を確保するため、人件費を削減し、いらない人員を次々とリストラする。恐ろしいことだ。少し前まで、あんなに景気良かったのに_。なぜ、自分はこの時代に生まれたのか?こんな目に合わなければならないのか?わけがわからなかった。この怒りを、悲しみのベクトルを誰に向けていいかわからなかった。私は何社も落ち続けたが、幸い中堅の出版社に就職することができた。同期の中には就職出来ず、フリーターになった者もいた。

   2008年のリーマンショック時にも私のいた会社は一回大きな危機があったが何とか乗り越えた。寝る間も惜しんで、働き、いつ辞めさせられるかビクビクして寝れない日が続いたのを覚えている。

 


    あれから数年が経った。最近の出版社もデジタル媒体の影響で収益を大きく落としているが、何とか踏みとどまっている。私も40代となり、立場が上になり、部下と共に毎日働いている。若い頃はくそお金があれば…!と小銭しか入ってない財布を見て思ったが、今は歳をとり収入も上がったおかげが、お金に対してあまり執着しなくなった。生活するのに困らない程度あればいいなと。だとすると、多額のお金を手にしたら自分は…。

 


    そう思っていると、あの若い男が荷台を引いて私の近くを通った。彼は私と目が合うと軽く会釈し、

    「おはようございます!いい天気ですね。いや〜、フリーマーケットするのには助かりますね!」 

     と白い歯を見せ、笑顔でこちらを見てきた。相変わらず、笑顔がステキないい男である。自分の知っている中で彼ほど笑う顔がいいと思うのは見たことがない。(まぁ、あまり人と交流する機会もないので比較にはならないが_。)

    彼は定位置に荷物を降ろすと、マーケットの準備を始めた。私は彼の元に向かった。彼が敷物の上に商品の陳列を終えると、

「この前の質問についてだが…」

私なりに考えた答えを彼に言い始めた。